関氏連載2

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伊豆長八からの手紙(第2回)  ユニバーサル技能五輪国際大会

伊豆長八作品保存会 関 賢助


2007年ユニバーサル技能五輪国際大会が、静岡県沼津市で11月7日より開催され、連日にわたって大勢の見学者が訪れ、会場は混乱をきたすほどであった。その総数は21万人を超えて、JR三島駅、沼津駅からのシャトルバスは、待ち時間は一時間を超える長蛇の列となり、人で溢れていた。

ようやく会場に到着した私達は、日本の高度の技術を紹介するエリアの会場9号館において、静岡県左官業組合の青年部の皆さんが主催する「光るドロダンゴの実演」と「壁塗り体験コーナー」を見学することになった。ドロダンゴの体験コーナーは囲む人達の輪で中が見えない。背伸びして、ようやく中を覗いてみると、体験者は磨くほどに変わり、艶が出てくるドロダンゴを無心に楽しんでいる。

そこから少し離れた所には、技能士会の皆さんが、最近では見かけることの少なくなった土壁塗りの体験コーナーを設けている。木舞壁の荒壁塗りに挑戦している女性は、発酵し始めて臭いの出始めた土にも「何のその」と、鏝を動かしている。

技能五輪2_1.jpg

「さて、それでは」と、本番の左官競技会場へ向かうことにした。我が業界からの出場者、掘美幸さんは日本の代表として参加している。各国の男性代表の中で唯一女性選手であった。いつもの現場での仕事とは異なる、洋風の室内壁の課題に向かって、4日間の挑戦である。見慣れている日本左官業組合連合会(日左連)の技能コンクールの課題ほどの細かな所は見られないが、取り付ける蛇腹の引き物は大きく、重量がありそうだ。壁に取り付ける扇状の引き物も大きなもので、これも重いのでは。

会場周辺には、松崎町で開催された全国技能大会で顔見知りとなった、左官組合の方々の姿も見ることができた。堀選手に声をかけることはできなかったが、会場に添えられていた日章旗は、たくさんの応援メッセージで埋まっている。

堀選手を指導している高野雅一氏は、日左連の全国技能競技大会の優勝者。長八作品の保護保存工作で多大なお世話になった東京都の藤井平太郎先生のもとで修行中に、民家から長八の壁画抜き取り作業に協力していただいた時からの私の友人だから、今回の技能五輪は気になっていた。日本を代表する競技役員の長谷川哲義氏は「伊豆の長八美術館」建設の際に、何かとお世話になった方なので、今回の競技大会で会うと、何か私は肩に力が入ってくるのがわかった。

競技の結果が気になっていたが、21日の発表では堂々の銀メダル獲得が公表された。男子選手を相手の勝負を制したのだから、立派な記録だ。今後はどのように成長してゆくのか、楽しみである。

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