関氏連載3

左官的塾 web

塗り壁の文化を伝える

| HOME | 連載一覧 | 関氏連載3 |

伊豆長八からの手紙(第3回)  伊豆長八の里に、巨大な光る泥団子出現

伊豆長八作品保存会 関 賢助


【写真】関賢助 泥だんご_(2)_2.jpg【写真】関賢助 泥だんご_(1)_2.jpg

伊豆の松崎町に「光る泥団子」が現れたのは2005年9月初めのことである。東京の竹中工務店で開催された「大工を支えた工人たち 左官とその道具」展の会場において、板橋の左官職人、河西栄さんと会い、その師匠である榎本新吉さんを訪ね、初めて光る泥団子を見た松崎町の二人の職員は驚いた。

お土産にいただいた団子を眺めながら、何としても自分の手で作るのだと、インターネット等を利用して資料や材料を集め、手探りで始めたが、噂が広まり「蔵つくり隊」(*)のメンバーは次々と団子を手掛けることとなり、やがて「伊豆の長八美術館」において、「団子教室」を開催するまでになっていた。

2007年になって、もう少し大きな団子はできないかと、6月に直径40cmの団子作りに成功したものの、秋に開催される全国左官技能競技大会までに、さらに大きなものへ挑戦することになり、7月から準備を始めた。

テーマは松崎町の土蔵スタイルでできないか(真ん中を空洞にして部屋とする)。これは芯まで土で固めると過大な重量となり、上下のない団子を回転させて細工をすることが不可能になる。そこでイベントで使用されるクス玉を芯に、中は蔵座敷とした。

玉の周囲をネットで包み、セメント入りの中塗土を塗り、その上に竹木舞を編み、荒壁を塗り、2週間後、土で中塗りをし、乾燥を待って砂漆喰で再度の中塗り。この工程はすべて塗り付けは鏝で、表面は「円は球に通じる」と丸いプラスチックの笊(ざる)やバケツで均(なら)した。仕上げは石灰クリームに漆喰の着色剤「群青」(ぐんじょう)を混入し、青い地球をイメージすることにした。群青の仕上げはガラス瓶で磨き上げたが、団子作り教室に参加した子どもたちも協力して完成させた。

直径80cm、重量100kg前後か・・・? 持ちにくく、ようやく大人4人で台車に乗せ、展示場所まで運ぶのに苦労した。

「漆喰は空気中の炭酸ガスを吸収して硬化する。地球温暖化の防止に役立つ、エコロジー団子である」と豪語しています。

*(編集室注)
「蔵つくり隊」
伊豆・松崎町にある「なまこ壁」の保存・保護、蔵づくりに取り組んでいるグループ。

 連載一覧へ戻るLinkIcon