植田氏かまど報告

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鏝の作成について

淡路の左官職人 植田俊彦


自分自身、まだカマドに3回ほどしかたずさわっていませんが、曲面を塗ること自体左官人生の中でそうあることではないので、鈴鹿の松木憲司氏・伊勢の西川和也氏にカマド塗りに誘われるがままに、参加しました。

彼らは磨きに対して息の合った中で手順よく、「あ、うん」の呼吸で淡々とこなしていきます。両氏は道具にもこだわり、いろんな鏝の形状を考え、仕事に合ったものを工夫できる職人であると共に、何にでも興味を示し、技術の向上に日々努力している前向きな職人です。

今回の材料に関しては、初心者なので二人の話を聞きながら作業を進め、大きな曲面における鏝の使い方など、初めは戸惑いましたが、回数を重ねる度に何とか分かるようになってきました。やはり経験です。最初は材料に対する理解が十分ではありませんでしたが、そのうち鏝の入る瞬間が分かるようになり、今では講釈も言うほどとなり、それなりに仕上がって来ました。

今回、鏝を梶原製作所で作ってもらい、皆さんに見て、使ってもらえるように、篠山のカマド講習会でお披露目させてもらいました。なかなかの出来であると参加者に評価してもらいました。さすが鏝作りの名人です。一度話をするだけで僕の思いどおりの鏝を作ってくれました。


鏝の形状
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3種類の最大曲限界
1. 形はハリ通し鏝のように長いが、あくまでも磨き用押さえ鏝であるため、親指が柄の先端に乗るように、しお首より3cm出しました。
2. 柄の形は押さえ鏝なので少し太めに、柄の長さは邪魔にならないように短目が良い。
3. しお首は指の太さに合わせて注文する必要があります。

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今回3種類の鏝を用意しました。砂漆喰及びノロこなし押さえは(ロ)を使用。磨き押えには(イ)を使用。(ロ)(ハ)のように腰のやわらかい鏝は、成形には向いているが、強い圧力で押えるには使いづらい。この曲限界は自分の作るカマドの曲面に合わせて図面を描き、鏝鍛冶に注文したほうが良いと思います。

今回の篠山や伊勢の赤福は曲面が広いのでこの形が最適でした。また曲げ始まりが、しお首の「かしめ」部から近すぎると、かしめ付近から鏝が折れやすくなるので、無理なく曲げられる腰加減にすべきです。 



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実際の肉厚はもっと薄い

①本来普通の磨き鏝は腹の中央をわずかにすき取っているがこの鏝は両刃の外の部分をすき取っている。


②この中央部と中スキの形状にすると曲げにくくなり円形の壁を押える折り、材料を引っ掛けやすくなり鏝をスムーズに運びにくい。従来のものを中スキというが、今回提案した形状は外スキという。  

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