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輪島土蔵修復(古窪邸)について

兵庫県篠山市左官職人 人見正美


2007年3月25日9時42分 震度6強(M6.9)直下型の能登半島地震があった。輪島では18時11分、震度5弱(M5.3)の余震もあり、余震は500回以上観測された。

僕たち篠山左官技術研究会は6月3~4日に篠山に於いて第7回鏝鍛冶と左官の交流会(講習会)を開催していました(全国から100名の参加)。輪島から土蔵修復支援グループの方々が来られ、活動の報告をされ左官ボランティアを要請されました。

土蔵の専門知識をもった左官が知識を出し合って蔵の良さ、蔵の強さ、伝統的建物の保存をしようということで取り組みました。

いま、輪島では3棟の土蔵を修復しています。その中の1つである古窪邸の土蔵は、グランドピアノが置いてありピアノでコンサートもされるそうです。この蔵は、腰壁部分だけがはく離していました。むかし、水害に遭ったらしく、その水位まで荒壁が弱っていたと考えました。弱った荒土の上には石膏中塗りし漆喰で仕上げていました。腰部分だけ竹小舞下地から解体し、日干しレンガを積んで修復することに決めました。(久住章氏の指導)

7月下旬に、輪島市三井築で採取した土と土蔵解体で出た古土に古畳で作ったスサを入れ、荒土を作りました。(画像をクリックすると大きくなります)
p2.古窪邸 図2彩色_2.jpgp3.古窪邸 図3-2_2.jpg

古窪邸 08 コンコース_2.jpg古窪邸 07_2.jpg

8月17日から日干しレンガ作りを鳳至小学校のコンコース(軒下の通路)を借りて行いました。30名の(小学生も含む)ボランティアで6種類のサイズの日干しレンガ1700枚を3日間で作りました。3日後にはひっくり返して風に当て乾かしました。約2週間乾かした後、積み始めました。大壁造りで積み上げ、目地は砂漆喰を使用しました。日干しレンガは収縮が激しい荒土だったために5㎜くらいは元より小さくなり、そのために目地幅が大きくなりました。

積み上げていく途中で柱(5寸角)と貫(1寸厚×4.5寸)に農業用ネット(幅100×長さ500×10㎜角)を用い、貫と一体となるよう覆いかぶせるようにしました。また、柱には割り竹とネットと大型ステップルで柱の外面に止め、レンガを覆いかぶせました。また、貫間は2尺3寸だったので、その間に割り竹40㎜を(150㎜ピッチに12㎜穴を開け)寝かせて間渡しにし、柱に穴を開け入れました。これもネットで内外をつなぎました。これにより、構造体と日干しレンガが一体となり、日干しレンガのはく離はなくなると考えました。

古窪邸 05_2.jpg古窪邸 09 日干しレンガ積み上げ01_2.jpg

余談ですが、輪島で判ったことですが200年前の建物は貫間が1.5尺で、それがいまでは標準で2.3尺となり、広いところでは3尺にまでなっています。これも構造的に弱くなった理由と考えられます。もともと能登では間渡し竹はありませんでした。

積み上げるにつれ「日干しレンガの赤色と砂漆喰の白目地がいい! どうしても、このレンガを見せたい!」と施主さんから言われ、「下地用に積んだのだから止めといた方がいいよ!」と言いました。しかし、「内部からレンガを見せたい!」と言われ、ネット部分は海鼠壁(なまこかべ)のように砂漆喰で盛り上げて軽く押さえ仕上げにしました。腰壁から上の部分は土で仕上げるか? 漆喰で仕上げるか? まだ決まっていません。調湿作用のある土蔵は、ピアノにもいいようで音が狂わないらしいです。

日干しレンガが見えるピアノ室で土蔵コンサートが出来る日もそう遠くないと思います。

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