芝氏連載1

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緑の家

特定非営利活動法人 緑の家学校 芝 靜代


1. キッカケ
 いまから10年ほど前に、イギリス留学から帰って、横浜の住宅の設計を頼まれ、そのままなんとなく設計事務所をしていた頃、色々な人に紹介されて家を建てたい人が来ました。その人たちに共通しているのは建材や間取りなどの知識が断片的にあり、そのほとんどがTVのコマーシャルや住まい関係の雑誌からでした。TVを余り見ないわたくしより新商品の知識がありました。これは現在のエコ商品についても同じで、方向性が地球環境にむいたマスコミのおかげでしょうか?とにかく「坪いくらかかるのか」と「準備できる建設資金」が頭の大部分を占めているようでした。

 実は家を建てることは、5年、10年、その又先の人生設計、それにそってどう暮らし、そのために自分たちにとって必要な住まいを考えることなのですが・・・、一番大事な今後の人生計画がどうしても隅に追いやられているように感じました。人生計画を立てる上で大切なことはやっぱり人の健康です。人が健康に暮らすには住まいと住まいの周辺環境も大事です。近隣との良好な関係もいざという時に必要です。ここで、一言言わせていただければ、家は個人資産であっても、大きくは社会資産です。20年や30年でスクラップビルドをするものではないのです。最低で100年、メンテナンスがよければ骨董的価値を加えて400年ぐらい持たせなくては!

 しかし、最後は金利計算やたくさんの面倒な諸手続きをやるわずらわしさから、小難しいことばかり言って、気転がきかないえらそうな設計士よりも、親切で熱心な実務に長けた住宅メーカーの営業マンを頼って、家を建てることになります。
そのころ既にシックオフィス、シックハウス、シックスクールの問題がクローズアップされていましたが、知らないことは恐ろしいというか、合板、集成材、塗装、コーキング、抗菌、防ダニ、防虫、防煙、etc,でできたピカピカの家がよく見えてしまうのです。

 これが学校をやろうと思ったキッカケです。本来、義務教育の家庭科の中で家作り、庭作りをきちんと教えるべきだと思うのです。衣食住の住が教育に欠けています。しかし、わたくしは文部大臣ではないので、義務教育制度を改革できません。が、せめて一般の人と一緒に勉強しようと思ったわけです。
家を建てる人、設計する人、庭を作る人、いつか家を建てよう、またリフォームしようと思っている人、家を借りようとしている人、誰でも良いから、知らないことを知ろうという学校を作りました。それが緑の家学校です。
7年度目に入って、卒業生も200名近く、その職種もまさに、不動産、建設、造園、主婦、公務員、商社マン、金融関係、自由業と多岐に渡っています。

2.ツチカベ
  講座の内容は土作りと有機農業から始まって、家や庭の材料、工法、自然エネルギー利用、町並みと植物の利用、コミュニティー作りまでです。
2003年からは北軽井沢の3000平米の敷地に緑の家学校の授業内容を実践するべく260平米の建物を建設しています。水道も引かず、下水も流さず、電気も引かない、勿論、売らない独立型の建物です。国産材、間伐材を使って、金物を使わない伝統的手法に新しい構造理論を導入した工法で建てられています。又、建材も工法も出来るだけ昔から使われている技術を導入し、自然なものを近くから調達しました。

 その一つがツチカベです。竹とシュロ縄による小舞組み、間伐材の木摺打ち、その上に荒壁を平成会の左官屋さんの指導で塗りました。荒壁用の土は近くの上田市から古土蔵を壊したものと千曲川の粘土を運び、切り藁を入れて1年ぐらい現地で寝かしておきました。昔の結のような塗壁ワークショップでした。来春には中塗仕上げのワークショップを平成会に手伝っていただいてやりたいと計画しています。又、ツチカベの魅力に取り付かれた我々は代々木の春のアースディで、信州飯田で、矢切のギャラリー結花で、と塗壁に挑戦しています。

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